大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和62年(ワ)7054号 判決

アメリカ合衆国カリフオルニア州 コンプトン グラツドウイツクストリート 二〇〇六

原告

ウインドサーフイン インターナシヨナル インコーポレイテツド

右代表者

ホイールシユバイツアー

東京都渋谷区本町一丁目六〇番三号

原告

勝和機工株式会社

右代表者代表取締役

鈴木東英

原告ら訴訟代理人弁護士

三宅正雄

安江邦治

右輔佐人弁理士

松永宜行

神奈川県鎌倉市材木座五丁目一五番四四

被告

有限会社鎌倉海洋スポーツ

右代表者代表取締役

宇津喜昭彦

同市坂ノ下五番一〇号

被告

宇津喜昭彦

被告ら訴訟代理人弁護士

相良有一郎

右当事者間の昭和六二年(ワ)第七〇五四号、昭和六三年(ワ)第五〇四号損害賠償請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告ら各自に対し、連帯して一〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告らは、原告勝和機工株式会社(以下「原告勝和機工」という。)に対し、連帯して四〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1(一)  原告ウインドサーフイン インターナシヨナル インコーポレイテツド(以下「原告ウインドサーフイン」という。)は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有していた。

特許番号 第六三〇三五二号

発明の名称 風力推進装置

出願日 昭和四四年三月一一日

公告日 同四六年五月三一日

登録日 同四七年一月一一日

存続期間満了の日 同六一年五月三一日

(二)  原告勝和機工は、本件特許権について、原告ウインドサーフインから、次のとおり、範囲を日本国全域とする独占的通常実施権の許諾ないし専用実施権の設定を受けていた。

(1) 昭和四九年八月二〇日から同五六年三月二七日まで 独占的通常実施権

(2) 同五六年三月二八日から同五九年八月二〇日まで

専用実施権

(3) 同五九年八月二一日から同六一年一月二七日まで

独占的通常実施権

(4) 同六一年一月二八日から同年五月三一日まで

専用実施権

2  本件発明の特許出願の願書に添付した明細書(ただし、昭和五八年七月二七日付訂正審判請求に基づき訂正したもの。以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載は、本判決添付の特許審判請求公告中の訂正明細書(以下「本件訂正公報」という。)の特許請求の範囲の項記載のとおりである。

3  被告有限会社鎌倉海洋スポーツ(以下「被告鎌倉海洋スポーツ」という。)は、昭和五九年頃から同六一年五月三一日までの間、業として、別紙目録記載の風力推進装置(セイリニグボード)の本体装置(ボード部)(以下「被告製品」という。)を販売した。

4  被告製品は、次に述べるとおり本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物であるから、被告製品を販売する行為は、本件特許権を侵害するものとみなされる。

(一)(1) 本件発明の構成要件は、次のとおりである。

A 使用者を支持する本体装置である波乗り板があること

B 推進力として風を受け入れる風力推進手段があること

C 前記風力推進手段は、

ア 円柱と、

イ 該円柱に長い端縁部で取り付けられた帆と、

ウ 前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互いに連結され、かつ、一端で前記円柱に、また、他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、

エ 該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントと

を備えることを特徴としていること

(2) 本件発明の作用効果は、次のとおりである。

波乗り板に帆を設けることによつてこれを水上ボートにかえる場合、突風や激風によつて波乗り板が転覆する危険性が大であつたが、本件発明は、突風又は激風が襲つた場合、使用者が帆から手をはなし風力により帆を風下に倒すことにより、本体装置の転覆を免れることができるようにしたものであり、更に、使用者がブームを把持し、風向きに対し、帆の位置及び角度を調節するだけで、波乗り板を使用者の望む方向に進行させることができるという作用効果を有する。

(二) 被告製品は、別紙目録記載のとおりの構造であるところ、一見して明らかなとおり、本件発明の構成要件Aの「使用者を支持する本体装置である波乗り板」に相当し、かつ、本件発明の「風力推進装置」の生産にのみ使用する物である。

まず、被告製品には、ジョイントボツクスgが設けられているが、これは、「推進力として風を受け入れる風力推進手段」である「セイル及びブームを取り付けたマスト」の下端部を本体装置(ボード部)aに連結するためのジョイントを嵌入又は装着するための部材であつて、それ以外の用途を全く有しないものである。

また、被告製品には、フツトストラツプhが設けられているが、これは、使用者が右風力推進手段を操作する際に、本体装置(ボード部)a上で、身体の平衡及び安定を保つために、両足を差し入れて身体を本体装置(ボード部)a上に固定させるための部材であるから、通常の単なる波乗り板には設けられることのないものである。

更に、被告製品に装着されるゴム・ジョイントkは、別紙目録二の3から明らかなとおり、全体に三つの部分、すなわち、上方部分であるマスト受部k1と、中間部分であるゴム製屈曲部k2と、下方部分であるボード結合部k3とからなり、マスト受部k1は、ゴム製屈曲部k2に対して中心軸線(ピンq)のまわりに回転できるように連結されている。したがつて、ゴムジョイントkは、本件装置(ボード部)a上で、使用者がセイルを回転及び起伏させることができるように前記マストを本体装置(ボード部)aに連結する「ユニバーサルジョイント」であることは明らかである。

以上のとおりであるから、被告製品は、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物である。

5  被告鎌倉海洋スポーツは、原告ウインドサーフインが本件特許権を有し、かつ、原告勝和機工が前記1(二)のとおり独占的通常実施権ないし専用実施権を有することを知りながら、昭和五九年頃から同六一年五月三一日までの間、被告製品を少なくとも一二五〇艇販売した。原告らは、同被告の右行為により、原告らの製品の販売数量が少なくとも一二五〇艇、金額にして一億九三〇〇万円減少したため、次のとおり損害を被つた。

(一) 原告勝和機工が原告らの製品を販売して得る利益は、販売価格の二五パーセントであるから、失つた利益の額は、少なくとも四八二五万円(一億九三〇〇万円×二五パーセント-四八二五円)を下らない。

(二) 原告ウインドサーフインは、原告勝和機工に対する本件特許権の独占的通常実施権の許諾ないし専用実施権設定の対価として、正味販売価格の六パーセントに相当するロイヤリテイーを受ける権利を有していた。したがつて、原告ウインドサーフインは、原告勝和機工が一億九三〇〇万円相当の原告らの製品の販売をすることができなかつたことにより、その六パーセントに相当する一一五八万円のロイヤリテイー収入を失い、これと同額の損害を被つた。

6  被告宇津喜昭彦は、被告鎌倉海洋スポーツの代表取締役として同社をして故意に原告らの権利を侵害させ、もつて、原告らに損害を与えたのであるから、有限会社法三〇条の三第一項に基づき、原告らに対し、被告鎌倉海洋スポーツと連帯して原告らの右損害を賠償する義務がある。

7  よつて、原告勝和機工は、被告らに対し、前記5(一)の損害四八二五万円(ただし、うち一一五八万円は、原告ウインドサーフインの請求と不真正連帯債権)のうち五〇〇万円、原告ウインドサーフインは、被告らに対し、前記5(二)の損害一一五八万円(ただし、原告勝和機工の請求と不真正連帯債権)のうち一〇〇万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1(一)は認める。同1(二)のうち、原告勝和機工が原告ウインドサーフインかち、(2)及び(4)のとおり、範囲を日本国全域とする専用実施権の設定を受けていたことは認め、その余は知らない。

2  同2は認める。

3  同3のうち、被告鎌倉海洋スポーツが、原告ら主張の期間、別紙目録第1図及び第2図並びにその説明に記載のとおりの波乗り板(ボード)を販売したこと、同波乗り板(ボード部)に用いられるジョイントが同目録第3図及びその説明に記載のとおりのものであることは認める。

被告鎌倉海洋スポーツが販売した波乗り板(ボード)は、商品名でいうと、別紙目録商品名一覧表中、ダブシエイプ、セイルボードマウイ、マツドシヤーク、テイガ及びハイフライである。

同3のその余の事実は否認する。

4  同4(一)(1)は認め、同(一)(2)は知らない。同4(二)は否認する。

5  同5のうち、被告鎌倉海洋スポーツが原告ら主張の期間内に被告製品を一六五艇(そのうち、カスタムボードが九九、プロダクションボードが六六)販売したことは認め、その余は否認する。なお、右のプロダクションボード六六艇のうち五艇は、原告らの製品である。

6  同6は否認する。

三  被告らの主張

1  被告製品は、次に述べるとおり、本件発明の風力推進装置、すなわち、ウインドサーフインの生産にのみ使用する物ではない。

(一) 被告製品のような波乗り板(ボード)には、プロダクションボードと呼ばれるウインドサーフイン用のボードと、カスタムボードと呼ばれるサーフイン用のボードとがある。被告鎌倉海洋スポーツが販売した被告製品は、サーフイン用のカスタムボードの方が多い。このように、被告製品は、本件発明の風力推進装置、すなわち、ウインドサーフインの生産にのみ使用する物ではないのである。

(二) 若しも、被告鎌倉海洋スポーツの販売したボード、すなわち、被告製品が本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物であるならば、同被告は、被告製品を風力推進装置の「生産」をしている者に販売するしか方法がないはずである。ところが、同被告が販売した相手方は、すべて一般の「個人ユーザー」であつて、風力推進装置を生産している者ではないのである。このことは、同被告が販売した被告製品が本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物でないことを意味している。

特許法一〇一条が特許権の侵害に該当しない行為を特許権の侵害に該当すると擬制して特許権者を保護しようとしたのは、生産にのみ使用する物の実施をそのまま放置した場合は、生産に「のみ」使用する物であるが故に、その後、必然的に特許物が生産され、必ずや特許権の侵害が発生すると予測されるのに、これを放置することは特許権者の保護に欠けると立法者が考えたからである。したがつて、特許物の生産にのみ使用する物の実施行為とは、その後に特許権の侵害が発生したことまで要件としないまでも、「販売等をそのまま放置した場合には特許権の侵害が必然である(あるいは高度の蓋然性がある)」と考えられる類型的な行為に限定して考えるべきである。ところが、被告鎌倉海洋スポーツが販売した相手方は、本件風力推進装置の生産者ではなく、一般の個人ユーザーである。同被告が個人ユーザーにだけ被告製品を販売しているという販売形態それ自体からは、原告らの本件特許権の侵害が発生する蓋然性はないのであるから、このような販売行為は、そもそも、特許法一〇一条一号所定の行為に該当しないものというべきである。

2  被告製品は、ウインドサーフインに使用する場合においても、次に述べるとおり、本件発明の構成要件Cの「ユニバーサルジョイント」を備えていないから、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物ではない。

(一) 本件明細書は、本件発明の特許出願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初の明細書」という。)を訂正審判請求によつて訂正したものである。その訂正の内容は、本件明細書(本件訂正公報)と当初の明細書(本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という。))とを比較することによつて知ることができるが、特許請求の範囲についてみると、「明瞭でない記載の釈明」として訂正が認められたもののほか、「特許請求の範囲の減縮」として、風力推進手段の構成を具体化し、かつ、同手段にユニバーサルジョイントを付加したのである。

ところで、「ユニバーサルジョイント」とは、日本語では「自在軸継手」と呼ばれ、JIS規格として定義されている。それは、「主として軸線が一致しないで、ある角度をもつた二軸の接続に用いる軸継手」というのである。右の定義によれば、ユニバーサルジョイントは、(1)(一回転のための)軸が複数(少なくとも二軸以上)存在すること、(2)右複数の軸線が主として一致しないである角度をもつていること、(3)右軸が継手で接続されていること、以上の構成を有するものである。ところで、原告ウインドサーフインは、訂正した本件明細書において、実施例として三つの回転軸を接続したユニバーサルジョイントを掲げている。

これに対して、被告鎌倉海洋スポーツが販売した被告製品のボードは、ゴム製のゴム・ジョイントKを接続することができるようになつているものであつて、ユニバーサルジョイントを接続することはできない。そして、このゴム製のジョイントは、回転のための軸が一つしかなく、マストの起伏はゴムの弾力性を利用したものであつて、軸と軸とを接続するといつた自在軸継手のもつ構成を有していない。

(二) 本件発明の「ユニバーサルジョイント」は、既に存在していた「ユニバーサルジョイント」を、帆を付けるマスト(円柱)とボード(波乗り板)との結合に利用したにすぎないのである。本件明細書の記載をみても、「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結する」ために、既に公知であつた「ユニバーサルジョイント」を利用したということが分かるだけである。仮に「ユニバーサルジョイント」の本来の利用目的が動力を伝達するためであつたとしても、本件発明においては、「ユニバーサルジョイント」を「回転及び起伏」の機能を持たせるために利用したということである。

四  原告らの反論

1  被告らの主張1について

(一) 被告製品は、ウインドサーフイン用として製造され、販売され、ユーザーも一般にこれをウインドサーフイン用として購入使用するのが通例である以上、たまたま、波乗り板その他として使用することができるとしても、特許法一〇一条一号所定の「のみに使用する物」というを相当とする。もつとも、社会通念上問題にならない低いパーセンテイジながら、ウインドサーフイン以外の用途にも使用することができる物を差し止めることに割り切れないものを覚える向もあるかもしれないが、侵害(みなし侵害も直接侵害である)の具体的可能性(危険性)のある物が差止めの対象とされることは、本件に限らず常にそうなのである。差止めを免れようとすれば、その物が構造上、ウインドサーフイン用には絶対に使用することができないものであることを明らかにすべきである。それに成功しない限り、その製品は、いわゆる「みなし侵害」のおそれがあるものとして、差止めの対象となることは、むしろ、当然である。侵害の予防策としての差止めということは、まさに、そういうことなのである。

(二) 被告らは、被告製品はサーフイン用のボードとして使用されているとして、特許法一〇一条一号の適用を否定する。しかし、風力推進装置(セイリングボード)の本体装置(ボード部)とサーフイン用のボードとは、その目的及び役割が全く異なるものであり、その結果、ボードそのものの形状や構造に際立つた差異が存在するのである。すなわち、セイリングボードの本体装置(ボード部)にあつては、使用者は、水上に浮かんだボード部の上に立ち、その上でボード部に結合されたマストを回転起伏させることによつて、ボードを所望の方向に滑走させるという操作を行う。そこで、右目的にそつて、ボード部は、その上に使用者が立つた場合にも、常に水上に浮かんでいられるようなものが要求されるのである。そのために、ボード部は、右浮力を得るに十分な長さからなつており、最短のものでも二四〇センチメートル、大半は二五〇センチメートルないし二八〇センチメートルの長さからなつている。一方、サーフイン用のボードは、出現したごく初期の頃は別として、現在では二〇〇センチメートル以下のものばかりであつて、使用者が静止したボード上に乗つて立とうとすると、ボードは沈んでしまうようなものである。サーフイン用のボードがそのようなものであるのは、サーフイン用のボードの目的自体からきている。サーフイン用のボードは、使用者が体の一部として使用し、快適な波乗りを楽しむものである。そのために、最少限の大きさで効率よく波に乗る浮力を受けられる大きさがあればよいということになる。以上のように、セイリングボードの本体装置(ボード部)とサーフイン用のボードとは、その目的及び役割が相違し、どちらかといえば、むしろ、相互に相反する目的を有しているのであるから、当然の帰結として、その構造も異なり、したがつて、セイリングボードの本体装置(ボード部)を座興以外の目的で、サーフイン用のボードに転用するなどということは起こりえないことなのである。

2  被告らの主張2について

(一) 本件発明のユニバーサルジョイントは、自在軸継手ではなく、「前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結する」ジョイントであつて、被告らの主張する軸継手の英訳ではない。

次に、被告らのいう自在軸継手は、その定義からも明らかなとおり、一つの軸線を共有せず、相互にある角度を有している二つの軸を接続する継手ということであるから、本件発明のユニバーサルジョイントとは似ても似つかないものである。したがつて、被告らがその自在軸継手の定義からユニバーサルジョイントの構成を即断する方法は、論理的に誤つている。また、「自在軸継手」の定義から抽出される内容は、被告らのいうユニバーサルジョイントの構成とは全く異なるという意味において、被告らの主張は、内容的にも誤つている。

(二) 本件発明のユニバーサルジョイントは、「該ブームをにきる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結する」機能を有するものであり、これが本件発明の構成に欠くことのできない事項、すなわち、いわゆる必須要件の一つであり、このことは、特許請求の範囲の記載に照らして明らかである。したがつて、右の機能を有するものであれば、具体的構造のいかんを問わず、本件発明にいう「ユニバーサルジョイント」に該当する。なお、特許請求の範囲に記載された作用効果に関する事項は、発明の構成を機能的に限定するものであり、そのような機能的限定は、発明の完全な保護を図るため、当然に許されるべきものである。

被告らのいう自在軸継手は、動力を伝達する継手であり、動力を伝達しない本件発明のユニバーサルジョイントとは類を異にするものである。本件発明にいうユニバーサルジョイントは、機械的構造のものには限られない。そして、被告製品のジョイントは、「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結する」機能を有するものであることは明白であるから、本件発明にいうユニバーサルジョイントに該当するのである。

第三  証拠関係

本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求の原因1(一)の事実(原告ウインドサーフインが本件特許権を有していたこと)は、当事者間に争いがない。

同1(二)の事実(原告勝和機工の実施権)については、成立に争いのない(本件においては、事実認定に供する甲号各証は、いずれも成立について当事者間に争いがないので、以下書証の成立の真正についての摘示を省略する。)甲第一号証(特許登録原簿記録事項証明書)によれば、原告勝和機工は、本件特許権について、原告ウインドサーフインから、昭和四九年八月二〇日、地域を日本国全域、期間を同日から一〇年間とする專用実施権の設定を受け、昭和五六年三月二七日にその登録がされたこと、その後、昭和五九年八月二〇日、地域を日本国全域、期間を同日から特許権存続期間満了(昭和六一年五月三一日)までとする専用実施権の設定を受け、昭和六一年一月二七日にその登録がされたことが認められる(以上の事実のうち、昭和六一年一月二八日から特許権存続期間満了まで、及び、それ以前にも、原告勝和機工が、本件特許権について、地域を日本国全域とする専用実施権を有していたことは当事者間に争いがない。)。

二  請求の原因2の事実(本件明細書の特許請求の範囲の記載)は当事者間に争いがなく、右争いのない事実と甲第二号証(本件訂正公報)によれば、本件発明の構成要件は、請求の原因4(一)(1)のとおりであると認められる。

三  請求の原因3の事実(被告鎌倉海洋スポーツによる被告製品の販売)のうち、同被告が、原告ら主張の期間、別紙目録第1図及び第2図並びにその説明に記載のとおりの波乗り板(ボード)を販売したこと、同波乗り板(ボード部)に用いられるジョイントが同目録第3図及びその説明に記載のとおりのものであることは、当事者間に争いがないが、同被告が同目録商品名一覧表記載のすべての製品を販売したとする点については、争いがある。

四  そこで、仮に被告鎌倉海洋スポーツが原告ら主張の被告製品をすべて販売したものとして、被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かについて判断する。

1  原告らは、本件発明の「ユニバーサルジョイント」は、本件明細書の特許請求の範囲において「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイント」と定義されているものであるから、被告製品に用いられるゴム・ジョイントkは本件発明のユニバーサルジョイントに該当し、したがつて、被告製品は、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物である旨主張し、これに対して、被告らは、本件発明のユニバーサルジョイントとは、実施例に示されているようないわゆる機械的構造の継手を意味するから、被告製品のゴム・ジョイントkはこれに該当せず、したがつて、被告製品は、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物ではない旨主張するので、この点について審案する。

2  甲第二号証によれは、次の各事実を認定することができる。

(一)  本件明細書において「ユニバーサルジョイント」の語が使用されている箇所としては、まず、特許請求の範囲の項において、「……該ブームをにぎる前記使用者か前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置。」(五頁右欄一七行ないし二一行。本件訂正公報における頁行を示す。この項において以下同じ。)との記載があるほか、発明の詳細な説明の項において、(1)「本発明は、使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを含み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取り付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置を提供する。」(三頁右欄一行ないし一二行)、(2)「特定の実施例において、ユニバーサルジョイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて波乗り板に風力推進手段の円柱が連結されている。」(三頁右欄一三行ないし一七行)、(3)「第1図を参照すれば使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け入れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の帆14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三軸線ユニバーサルジョイント36とを備える風力推進手段とを包含する風力推進装置が図示されている。」(三頁右欄三三行ないし四頁左欄三行)、(4)「第2図を参照すれば円柱12が三軸線ユニバーサルジョイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジョイント36は全体を不銹銅で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両側に保持されている締め板38、40によつて円柱12に取付けられている。」(四頁左欄二〇行ないし二五行)、(5)「操作時に、使用者は円柱12をユニバーサルジョイント36にて取付けてある位置の背後において波乗り板10の上面28に立ち、一方のブーム16又はブーム18をにぎる。」(四頁右欄四四行ないし五頁左欄二行)、(6)「本発明によれば、風力推進手段をそのユニバーサルジョイントを介して回転及び起伏自在に波乗り板に連結したことにより、突風又は激風時に風力推進手段のブームから手を離せば、該風力推進手段はその帆に風を受けない方向へ倒れ、波乗り板を安定させ、その転ぷくを防ぐことができる。」(五頁右欄四行ないし九行)との各記載があり、また、図面の簡単な説明の項において、第2図の説明として、「第2図は第1図の線2-2における帆の回転及び起伏に使用するユニバーサルジョイントの断面図」(一頁左欄二行ないし四行)との記載がある。図面としては、風力推進装置の外観図である第1図(六頁)中に三軸線ユニバーサルジョイント36が記載されているが、同図ではその構造は不明であり、第2図(五頁)は、三軸線ユニバーサルジョイントの断面図であつて、その詳細な構造を明らかにしている。

(二)  本件明細書において、「ユニバーサルジョイント」として具体的にその構造が示されているものは、実施例である三軸線ユニバーサルジョイントのみであつて、その構造については、願書添付の図面に記載されており(本件訂正公報五頁2図)、また、その説明として、発明の詳細な説明の項において、「第2図を参照すれば円柱12が三軸線ユニバーサルジョィント36によつて前記台29に連結されている。前記ジョイント36は全体を不誘銅で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両側に保持されている締め板38、40によつて円柱12に取付けられている。前記締め板38、40はベース27の幾分下までの延長部42、44を備えている。この延長部42、44は不銹鋼製管46の短い区画の両側に配置されている。1/4インチ(六・三mm)直径の頭付きピン48が前記締め板の延長部42、44の孔50、52の中をのび、頭付きピン48のコツタ孔56に挿入されたコツタピン54によつて回転自在に取付けられている。不銹鋼の板で作つたクレビス58が、その側面60(その中の一つだけを図示してある)を締め板の延長部42、44の下に横方向になるよう、管46上に配置されている。1/4インチ(六・三mm)直径の頭付きピン62(第2図に断面で示す)がクレビスの側面と管46の孔64を貫通しており且つ頭付きピン62のコツタ孔に入つたコツタピン(図示せず)によつて回転自在に取付けられている。前記頭付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏させることができる。長さ3インチ(七六・二mm)、直径1/4インチ(六・三mm)の丸頭のねじ68がクレビス58、のベース71の孔70を通りそこから座金72をその下の台29のほぞ孔78に入つているナツト74とロツクナツト76を通り、これによつてクレビス58をダガボード20に回転自在に取付けてある。ねじ68がクレビス58のベースを充分な遊びをおいて保持し、クレビス58を座金72に接触して回転可能としている。前記ねじ68は垂直の回転軸を構成し、ベース27はこの回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。」(本件訂正公報四頁左欄二〇行ないし同頁右欄一五行)と記載されている。

3  右認定の事実によれば、本件明細書の特許請求の範囲の項には、「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイント」との記載があるところ、原告らは、右記載をもつて本件発明における「ユニバーサルジョイント」の構成が明確に定義されている旨主張する。しかし、右記載は、「ユニバーサルジョイント」の作用ないしは機能を説明したにすぎないものであつて、これがいかなる構造のものであるか、その構成については何ら説明するものではない。

次に、発明の詳細な説明の項においては、まず、右同様の記載(前記2の認定事実(一)中の(1)の記載)があるが、この記載が「ユニバーサルジョイント」の構成を何ら説明するものではないことは、既に述べたのと同様である。このほかに、「特定の実施例において、ユニバーサルジョイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて波乗り板に風力推進手段の円柱が連結されている。」との記載(同(2)の記載)があるところ、右記載において示された「ユニバーサルジョイント」の実施例がいかなる範囲のものを指すかについての判断はしばらくおくとしても、仮に「三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」というのが「ユニバーサルジョイント」の特定の実施例であるとしたところで、右記載からは、「ユニバーサルジョイント」の実施例として「三個の回転軸線を備えた接手」、すなわち、いわゆる三軸線ユニバーサルジョイント(その構造については、前認定のとおり、発明の詳細な説明の項及び図面において明らかにされている。)が含まれることは明らかとなるものの、「又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」については、その作用ないしは機能を述べるだけで、具体的にどのような構成のものがこれに当たるかは一切明らかでない(前認定のとおり、本件明細書においては、三軸線ユニバーサルジョイントのほかには具体的な構成を明らかにする記載は、一切存在しない。)。また、「風力推進手段をそのユニバーサルジョイントを介して回転及び起伏自在に波乗り板に連結したことにより、」との記載(同(6)の記載)についても、同様に、この記載によつては、「ユニバーサルジョイント」の作用ないしは機能は明らかとされているか、その構成は一切明らかでない。発明の詳細な説明の項におけるその余の「ユニバーサルジョイント」の記載(同(3)、(4)、(5)の各記載)は、いずれも特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントの構造を説明するものである。

また、図面の簡単な説明の項において、第2図の説明として、「ユニバーサルジョイント」の語は用いられているものの、第2図においてその構造が示されているのは、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントである。

そして、前認定のとおり、本件明細書において「ユニバーサルジョイント」の語が使用されている箇所は以上ですべてであつて、また、「ユニバーサルジョイント」の実施例についても、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントの構造が明らかにされているだけであつて、それ以外の継手について、その構造を明らかとするような説明文も図面も一切存在しない。

右のとおり、本件明細書において用いられている「ユニバーサルジョイント」の語については、右に認定した以上に、右明細書上においてその内容ないし構造が説明あるいは図面によつて明らかにされているものとはいえない。

以上によれば、本件明細書においては、特許請求の範囲はもちろん、発明の詳細な説明の項及び図面を子細に検討しても、「ユニバーサルジョイント」については、風力推進手段を回転及び起伏自在に波乗り板に連結する作用ないしは機能を有するものであることが明らかにされているだけであつて、その構成については、その実施例として、唯一、三軸線ユニバーサルジョイントの構造が説明及び図面によつて示されているにすぎない。

4  そして、他方、被告製品は、風力推進装置(セイリングボード)の本体装置(ボード部)であつて、その本体装置aは、マストに連結するジョイントを形成することができるようになつており、そのジョイントとして用いられるゴム・ジョイントkの構造は、別紙目録第3図及び図面の説明の項並びに同目録構造の項3記載のとおりである。

5  そこで、被告製品に用いられるゴム・ジョイントkを本件明細書において「ユニバーサルジョイント」の実施例としてその構造が明らかにされている三軸線ユニバーサルジョイントと比較すると、右三軸線ユニバーサルジョイントは、前認定(前記2(二)記載)のとおり、頭付きピン48により円柱12と管46とを連結し、頭付きピン48と直交する頭付きピン62により管46とクレビス58とを連結し、更にこれを丸頭のねじ68により回転可能に波乗り板10に取り付ける方法により風力推進手段と波乗り板を連結するものであつて、頭付きピン48と頭付きピン62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、円柱12を各回転軸のまわりに回転可能とすることを通じて、波乗り板10上で起伏させることを可能としているが、他方、被告製品に用いられるゴム・ジョイントkは、全体に三つの部分、すなわち、上方部分にあるマスト受部k1と、中間部分であるゴム製屈曲部k2と、下方部分であるボード結合部k3とからなり、マスト受部k1は、ゴム製屈曲部k2に対して中心軸線(ピンq)のまわりに回転できるように連結されているものであつて、ゴム製屈曲部k2の材質自体の特性である弾性を利用することによつて前後左右の方向への屈曲傾斜を可能としているものであり、前記三軸線ユニバーサルジョイントにおける相互に直交する水平の二軸に相当する構造は存在しない。右によれば、被告製品に用いられるゴム・ジョイントkと本件明細書における三軸線ユニバーサルジョイントとでは、風力推進手段を本件装置上で起伏自在とする構成において、技術的思想を異にするものというべきである。

6  そして、前述のとおり、本件発明における「ユニバーサルジョイント」について、本件明細書においてその構成が明らかにされているのは、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントだけであることからすれば、少なくとも、被告製品に用いられるゴム・ジョイントKのように、構成部材の材質の弾性を利用することによつて前後左右の方向への屈曲傾斜を可能とする構造については、本件明細書においてその技術事項の開示があるものと認めることができない。

したがつて、被告製品に用いられるゴム・ジョイントKは、本件発明の構成要件Cの「ユニバーサルジョイント」に該当するものとはいえない。

7  このことは、次の点からも明らかである。

すなわち、甲第三号証によれば、当初の明細書の特許請求の範囲の項には、「1 使用者を支持するようになつた本体装置と、前記本体装置と旋回可能に協働し且つ推進力として風を受け入れるようになつた風力推進装置とを包含し、前記推進装置の位置が前記使用者によつて制御でき、前記推進装置が使用者の不在のとき旋回防止力を失うことを特徴とする風力推進装置。」(本件公報三頁6欄一四行ないし一九行)と記載されていて、「ユニバーサルジョイント」の語は用いられておらず、発明の詳細な説明の項には、前記2の認定事実(一)の(2)とほぼ同一の後記記載(同一頁2欄二五行ないし二九行)、同(4)と同一の記載(同二頁3欄三八行ないし四三行)及び同(5)と同一の記載(同三頁5欄五行ないし八行)はあるものの、同(1)、(3)及び(6)に対応する記載はいずれもなく、他に「ユニバーサルジョイント」の語を用いた記載はない。図面の簡単な説明の項には前記2の認定事実(一)とほぼ同一の記載(同一頁1欄二〇行ないし二二行)があり、願書添付の図面についても、同(一)と同一の図面であることが認められる。

右のとおり、当初の明細書においては、特許請求の範囲の項に「ユニバーサルジョイント」の語はなく、また、前記2の認定事実(一)の(4)及び(5)と同一の記載中の「ユニバーサルジョイント」は、いずれも特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントを意味するものである。したがつて、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントを離れての「ユニバーサルジョイント」の語は、前記2の認定事実(一)の(2)とほぼ同一の記載である「特定の実施例において、ユニバーサルジョイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて乗物本体に前記推進装置が連結されている。」との記載部分だけに存在することになる。そこで、右部分において「ユニバーサルジョイント」の語の意味する内容を検討するに、まず、右記載中の、「三個の回転軸線を備えた接手」と「使用者が操作しないとき推進装置を、殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」との関係については、後者は具体的な構造を離れて抽象的な作用ないしは機能を説明する記載であつて、その意味する範囲は広範であり、前者も包含するものである。このように、「三個の回転軸線を備えた接手」が「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」に包含される関係にある以上、両者が、共に「ユニバーサルジョイント」の例示として、接続詞「又は」によつて結ばれる並列的な関係に立つものと解することはできない。そして、前記のような両者の内容的な関係にかんがみれば、通常の用語法としては、むしろ、「ユニバーサルジョイント」の例示としては「三個の回転軸線を備えた接手」のみであつて、「ユニバーサルジョイント例えば三個の回転軸線を備えた接手」と、それ以外の「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」とか、接続詞「又は」によつて並列的に結ばれているものと解するのが相当である。そうであれば、当初の明細書においては、「ユニバーサルジョイント」について、その例示として「三個の回転軸線を備えた接手」、すなわち、三軸線ユニバーサルジョイントが挙げられているだけであつて、「ユニバーサルジョイント」以外にも「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることかできるような接手」が存在することになる。右のとおり、「ユニバーサルジョイント」は、「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」のすべてではなく、そのうちの一部を指すものである以上、その意味する範囲は、例示されている唯一の例である三軸線ユニバーサルジョイントないしはせいぜいこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。

そして、当初の明細書の特許請求の範囲の項の記載は、前記のとおりであつて、そこでは風力推進装置と本体装置とを連結する継手については何ら触れられていないから、右記載からは、継手として「ユニバーサルジョイント」を用いたものであつても、それ以外のものを用いた場合であつても、特許請求の範囲に含まれ得ることになる。

当初の明細書における「ユニバーサルジョイント」の意味が右のようなものである以上、昭和五八年七月二七日付訂正審判請求に基づく訂正後の本件明細書においても、「ユニバーサルジョイント」の語は、他に特段の事情のない限り、右と同一の内容を意味するものとして理解すべきものというべきである。そして、本件明細書において、「ユニバーサルジョイント」の語について、その内容を定義した記載が新たに加えられたような事情のないことは、既に認定した事実により明らかであるから、結局、本件明細書における「ユニバーサルジョイント」の語は、当初のけ明細書におけるのと同様、三軸線ユニバーサルジョイントないしはせいぜいこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。

したがつて、前記訂正において、「ユニバーサルジョイント」の語を特許請求の範囲に持ち込むことにより、風力推進手段と本体装置とを連結する手段の構造をも構成要件の一つとしに本件発明は、訂正前の当初の明細書における特許請求の範囲を減縮したものというべきであり、連結手段として、「使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」のうち前記のような「ユニバーサルジョイント」を用いているものだけか、特許請求の範囲に含まれるというべきである。

そして、被告製品に用いられるゴム・ジョイントKが、三軸線ユニバーサルジョイントないしはこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものに該当しないことは、前述のとおりであるから、被告製品に用いられるゴム・ジョイントkは、本件発明の「ユニバーサルジョイント」に該当するとはいえないことになる。

8  以上によれば、被告製品に用いられるゴム・ジョイントkは、本件発明の構成要件Cの「ユニバーサルジョイント」に該当しないから、たとえ、被告鎌倉海洋スポーツが、原告ら主張のとおり被告製品のすべてを販売したものであるとしても、被告製品は、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物であるということはできず、したがつて、同被告の被告製品の販売行為をもつて本件特許権を侵害するものとみなすことはできない。

9  原告らの被告宇津喜昭彦に対する請求は、被告鎌倉海洋スポーツの行為が本件特許権を侵害するものであることを前提とするものであるところ、前認定判断に照らし、右前提を欠くものというべきであるから、理由がないものといわざるをえない。

五  よつて、原告らの本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条及び九三条一項本文の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 若林辰繁 裁判長裁判官房村精一は転官のため、裁判官三村量一は海外出張中のため署名捺印することができない。 裁判官 若林辰繁)

目録

別紙図面及び説明書に示すとおりの風力推進装置(セイリングボード)の本体装置(ボード部)(商品名は別紙「商品名一覧表」に記載したとおり)

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

説明書

一 別紙図面の説明

(一) 第1図は風力推進装置(セイリングボード)のボード部の平面図、第2図は同側面図、第3図はジョイントの断面図である。

(二) 各図の符合は、次のとおりの各部材を示す。

本体装置(ボード部)・・・・・・・・・・・・・a

ジョイントボツクス・・・・・・・・・・・・・・g

フツトストラツプ・・・・・・・・・・・・・・・h

スケグ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・i

ゴム・ジョイント・・・・・・・・・・・・・・・k

マスト受部(ゴム・ジョイントの上方部分)・・・k1

ゴム製屈曲部(ゴム・ジョイントの中間部分)・・k2

ボード結合部(ゴム・ジョイントの下方部分)・・k3

ビン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・q

二 構造

1 本体装置(ボード部)aと、推進力として風を受け入れる風力推進手段を形成するセイル、マスト、ブーム及び右本体装置(ボード部)a上で、使用者が右セイルを回転及び起伏させることができるように前記マストを本体装置(ボード部)aに連結するジョイントとよりなる風力推進装置(セイリングボード)の波乗り板を形成することができる本体装置(ボード部)aである。

2 右本体装置(ボード部)a上には、前記マストを本体装置(ボード部)aに連結するジョイントを嵌入又は装着するジョイントボツクスgと、使用者が本体装置(ボード部)a上に立つ際に両足を固定するためのフツトストラツプhとが形成され、また、本体装置(ボード部)aの下面にはスケグ1が装置されている。

3 ゴム・ジョイントkは、全体に三つの部分、すなわち、上方部分であるマスト受部k1と、中間部分であるゴム製屈曲部k2と、下方部分であるボード結合部k3とからなる。マスト受部k1は、ゴム製屈曲部k2に対して中心軸線(ピンq)のまわりに回転できるように連結されている。

商品名一覧表

ダブシェイプ

セイルボードマウイ

マッドシャーク

ティガ

ハイフライ

ビクトリー

ボディグローブ

訂正明細書

〈34〉風力推進装置

図面の間な説明

第1図は本発明の風力推進装置の外観図、第2図は第1図の線2-2におけるの回転及び起伏に使用するユニバーサルジョイントの断面図、第3図は第1図の線3-3におけるブームとブームとの間の円柱調接合部の断面図、第4図は第1図の線4-4におけるブームとブームとの間の調接合部の断面図である。

発明の詳細な説明

本発明は風力推進装置に係る。

本発明が関係する分野は沿特に沿の分野である。

風力推進はボートや氷上ボートばかりでなく波乗り板のような沿や上例えば氷上ボートやそり、すなわち一般的に書えば任意の軽量な小型ボートの動力装置としても考えられてきた。普通は桑物に垂直に固定しているマストにを設けるか又はとマストを帆装置と制御構の細工にからませている。

を波乗り板に固定することによつてとの波乗り板としてのしみは失われ且つ從来制御のために必要であつた熟練はもはや必要でなくなる。人々は軽な帆沿の速度と感じを得る代りに帆を制御するに適当な熟練が必要となる。横ゆれに対する安定性がない波乗り板に帆を取付けることによつて突風や風によつて波乗り板が転ぶくずる問題が発生する。

故に従来は備えていなかつた風力推進手段を波乗り板に設け、この風力推進手段を設けることによつて波乗り板の元の乗心地や波乗り板を突風や微風下で転ぶくさせない制御特性を失わないようにすることが必要である。

本発明の目的は風に対する応性と速度を増大し且つ波乗り板の従来の乗心地と操従性すなわち制御特性を推進してそれから得られるたのしみをすようになつた風力推進手段を波乗り板に取付けることである。本発明は、使用者を支持する本件装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とをみ、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられたと、前記円柱の方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとをえることをとする、風力推進装置を提供する。

特定の実例において、ユニバーサルジョイント例えば3図の図転線をえた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段をんど自由動状態にずることができるような接手によつて波乗り板に風力推進手段の円柱が連結されている。

本発明は波乗り板にうまく利用できる。波乗り板のような横ゆれに対する安定性の低いにせかせ装置を設けることができる。せかせと言うは技術者に公知である中央なとダガボード(dogger-board)を含る、また安定性を増すために沿体かららに又はななめに水中に突入したその他の突起物をも含んでいる。

本発明は殆んどすべての操縦とかじとりを帆を通じて行い、かじやその他の操縦を設けても良いが無くてもよい。帆をあやつることによつて加速、方向転換、上手回しを行うことができる。しかし乍ら帆は回転及び起伏自在になつているから使用者が帆を保持して沿を安定させねばならない。突風又に風時に使用者に帆をせば、帆は直らに風力を受けない方向に移動する。

第1図を参照すれば使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け人れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三線ユニバーサルジョイント36とを備える風力推進手段とを包含ずる風力推進装置が図示されている。前記波乗り板10はその開口22の中に挿入され且つその底部から斜めに突出したダガボシード20をせかせとして備えている。前記ダガボード20の上部は波乗り板10の上面28を分備えてのび、あとから充分に説明するように円柱12を着するための台29を提供している。

円柱12はな丸い細長いフアイバグラスのであり、この場合このは軽くするため中空になつているが中英な木や金属で作つても良く、その下端に円筒状の木製ベース27をくさび止めしてある。前記円柱12は14の動自在マストとなり、且つ帆14の長い部の31に沿つて上方にしたへり30の中に挿入されてもいる。前記帆14の底部は、円柱12に近い帆14の下端緑にあるアイレツト34の中に入つているロープ32によつて、前記円柱12に取付けられている。

第2図を参照すれば円柱12が三ユニバーサルジョイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジョイント36は全体を不銹鋼で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両個に保持されているめ板38、40によつて円柱12に取付けられている。前記め板38、40はベース27の分下までの延長部42、44を備えている。この延長部42、44は不銹鋼製管46の短い区画の両側に配置されている。1/4インチ(6.3mm)直径の頭付きピン48が前記め板の延長部42、44の孔50、52の中をのび、付きピン48のコツタ孔56に挿入されたコツタピン54によつて回転自在に取付けられている。

不銹鋼の板で作つたクレピス58が、その側面60(その中の一つだけを図示してある)をめ板の延長部42、44の下に横方向になるよう、46上に配置されている。1/4インチ(6.3mm)直径の頭付きピン62(第2図に断面で示す)がクレピスの側面と管46の孔64を買通しており且つ頭付きピン62のコツタ孔に入つたコツタピン(図示せず)によつで回転自在に取付けられている。前記頭付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏することができる。

長さ3インチ(76.2mm)、直径1/4インチ(6.3mm)の丸頭のおじ68がクレビス58のベース71の孔70を連りそこから産合72をその下の台29のほそ孔78に入つているナツト74とロックナツト76を通り、てれによつてクレビス58をダガボード20に回転自在に取付けてある。ねじ68がグレビス58のベースを充分なびをおいて保持し、クレピス58を金72に触して回転可能にしている。前記ねじ68は垂直の回転軸を構成し、ベース27はての回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。

第1図と第3図を参照すれば、波乗り板10の表面28から4フイート(120cm)のところに積層木製ブーム16、18を円柱の横方向に設け、且つそれらの端部を弓形に連結してある。前記ブームの円柱の端部は1インチ(25.4mm)幅の物テープのループ80によつて互に連結され且つ円柱12を間に入れて該円柱に連結されている。このテープループ80は帆のへり30の三月形の孔82を通る円柱12を取りいている。前記テープループ80はい付け86によつて両端にリング84を保持している。このリング84は、木ねじ90によつてブーム16、18に固定した真製フツク具88と係合することによつてテープ80をブーム16、18に固定する。

第1図と第4図を参照すればブーム16、18はそれらの他端部において帆耳の端部にそれぞれ出しの孔92、94を備え、またねじ99によつてブーム16、18に固定された止め96、98を備えている。出し100が一方のブーム18の止め98からそのブーム18の出し孔94を通り、帆耳104の強した孔102を通り、第2ブーム16の出し孔92を通り、両方の出し孔94、92を通りそこから別のブーム16の止め96に通される。これにより、ブーム16、18はそれらの他端部において互に連結され且つ帆耳に連結される。つぎに出しをびんとつて止め96によつてしめつけて帆14をブーム16、18の間に保持する。

操作時に、使用者は円柱12をユニバーサルジョイント36にて取付けてある位置の背後において波乗り板10の上面28に立ち、一方のブーム16又又はブーム18をにぎる。若し使用者が風下に進行していて方向転換したいとき、板は帆14を前方に傾け、風の力を波乗り板10の先端部に作用させ、帆14のどちらの側面が風にさらされているかに応じて、波乗り板10を三か右に方向転決させる、これに反して着し使用者が上手回し間切りをするために風にまともに向つていきたいとき彼は帆14を後方に引いて風の力を板乗り板10の後方に作用させ、波乗り板10の後部を移動させて風にまともに向つていけるようにする.彼が風にまともに向いているとき彼は単に帆14の前部に歩いいて、反対側のブームをにぎつて帆をして風が帆14を備え波乗り板10が新らしいコースに入るようにすることによつて上手回しを完了する.速度を調整するため帆を前方と後方に移動させる.

突風によつて波乗り板10がひつくりかえろうとするおそれのあるとき使用者は単に帆をはなして風にまかせて危険を脱する.帆14はその円柱にローブ106を備えており、これによつて使用者は容易にを状態に引りもどすことができる.

本発明の範囲から説することなく多くの修正変更を行うことができる.

本発明によれは、風力推進手段をそのユニバーサルジョイントを介して回転及び起伏自在に波乗り板に連結したことにより、突風又は激風時に風力推進手段のブームから手をせに、該風力推進手段はその帆に風を受けない方向へ倒れ、波乗板を安定させ、その転くを防ぐことができる。〈3〉特許請求範囲

1 使用者を支持ずる本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを言み、該風力推進手段か、円柱と、該円柱に長い端部で取付けられたと、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることを持とする、風力推進装置.

FIG.2

〈省略〉

FIG.3

〈省略〉

FIG.1

〈省略〉

FIG.4

〈省略〉

〈31〉Int. Cl. B 63 h 〈32〉日本分類 84 E 8 84 J 21 日本国特許庁 〈11〉特許出願公告

昭46-19373

〈10〉特許公報

〈44〉公告 昭和46年(1971)5月31日

発明の数 1

〈54〉風力推進装置

〈21〉特願 昭44-18073

〈22〉出願 昭44(1969)3月11日

優先権主張 〈32〉1968年3月27日〈33〉アメリカ国〈31〉716547

〈72〉発明者 出願人に同じ

〈71〉出願人 ヘンリー・ホイール・シユバイツアー

アメリカ合衆国カリフオルニア州パシフイツク・パリセードス・ベイルート317

同 ジニームス・ロバート・ドレークアメリカ合衆国カリフオルニア州サンタ・モニカ・メサ・ロード385

代理人 弁理士 浅村成久 外3名

図面の簡単な説明

第1図は本発明の風力推進装置の外観図、第2図は第1図の線2-2における帆の旋回運動に使用するユニバーサルジョイントの断面図、第3図は第1図の線3-3におけるブームとブームとの間の円柱側接合部の断面図、第4図は第1図の線4-4におけるブームとブームとの間の帆耳側接合部の断面図である。

発明の詳細な鋭明

本発明は風力推進装置に係る。

本発明が関係する分野は沿特に帆沿並びに氷上ボートと上乗物の分野をんでいる。

風力推進はボートや氷上ボートばかりでなく波乗り板のような沿や上乗物例えば氷ボートやそり、すなわり一般的に言えば任意の重量な小型ボートの動力装置としても考えられてきた。普通は乗物に垂直に固定しているマストに帆を設けるか又は帆とマストを線帆装置と制御機構の網細工にからませている。

普通の帆のない乗物に帆を設ける効果はこの乗物を氷上ボート又は陸上ボートにかえることである。すなわち帆を波乗り板に固定することによつてこの波乗り板とその楽しみは失われ且つ従未制御のために必要であつた熟練はもはや必要でなくなる。人々は軽量な帆船の速度と感じを得る代りに帆船を制御するに適当な熱練が必要となる。帆をつけるように修正した別の乗物についても同じような変化が性ずる。横ゆれに対する安定性がない乗物に帆を取付けることによつて突風や数風によつて乗物が転ぶくする問題が発生する。

故に従未は備えていなかつた風力推進装置を乗物に設け、この装置を設けることによつて乗物の元の乗心地や制御特性を失わないようにすることが必要である。

本発明は風に対する感応性と速度を増大し且つ従未の乗心地と操縦性を増強してそれから得られるたのしみを増すようになつた風力推進装置を乗物に取付けることである。使用者を支持するようになつた乗物の本体装置と、前記本体装置と旋回自在に協働して風を推進力として受け入れるようになつた風力推進装置を包含する風力推進機を提供する。前記風力推進装置の位置は使用考によつて制御することができ且つこのような制御を行わないとき旋回抵抗力が殆んどなくなる。

特定の実施例において、ユニバーサルジョイント例えば3個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて乗物本体に前記推進装置が連結されている。

前記風力推進装置は乗物の本体に枢着した円柱と、これに取付けた帆とを包含している。使用者が帆の片側又は両側を把持できるような装置を設けている。すなわち帆をびんと張るたわ円柱上に横方向に取付け手で保持するようになつたブームを設ける。特定の真施例において前記円柱に横ざまに且つ円柱を間に入れてアーチ状に連結される1対のブームを設ける。

本発明は水上走や氷上ボートや上乗物に使用することができる。本発明はヨツトや小型自動車やカヌーやこぎ舟等に使用できるが、波乗リ板や氷上ボートやスケートボートやそりにもうまく利用できる。波乗り板のような横ゆれに対する安定性の低い船にせかせ装置を設けることができる。せかせと言う言薬は航海技術者に公知である中央板とダガボード(dagger-board)を含み、また安定性を増すために船体から平らに又はななめに水中に突入したその他の突起物をも含んでいる。

本発明は殆んどすべての操縦とかじとりを帆を通じて行い、かじやその他の操縦機構を設けても良いが無くてもよい。帆をあやつることによつて加速も方向転換も上手回しを行うことができる。しかし乍ら帆は旋回自在になつているから使用者が帆を保持して船を安定させねばならない。突風又は散風時に使用者は帆を離せば、帆は直ちに風力を受けない方向に移動する。

第1図を参照すれば波乗り板10と円柱12と三角形の帆14とブーム16、18とを包含する風力推進装置が図示されている。前記波乗り板10はその本体部に設けた開口22の中に挿入され且つその底部から斜めに突出したダガボード20をせかせとして備えている。前記ダガボード20の上部は波乗り板10の上面28を幾分越えてのび、あとから充分に説明するように円柱12を枢着するための台29を提供している。

円注12は丈夫な丸い細長いフアイバグラスの軸であり、この場合この軸は軽くするため中空になつているが中冥な木や金属で作つても良く、その下端に円筒状の木製ベース27をくさび止めしてある。前記円柱12は帆14の揺動自在マストとなり、且つ帆14の長い端縁部31に沿つて上方に傾斜したへり30の中に挿入きれている。前記帆14の底部は、円柱12に近い帆14の下端縁にあるアイレツト34の中に入つているローブ32によつて、前記円柱12に取付けられている。

第2図を参照すれば円柱12が三軸縁ユニバーサルジョイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジョイント36は全体を不銹鋼で作り且つ木ねじ37によつてペース27の両側に保接されている締め板38、40によつて円柱12に取付けられている。前記締め板38、40はペース27の幾分下までの延長部42、44を備えている。この延長部42、44は不銹鋼製管46の短い区面の両側に配置されている。〈省略〉インチ(6.3mm)直径の頭付きピン48が前記締め板の延長部42、44の孔50、52の中をのび、頭付きピン48のコツタ孔56に挿入されたコツタピン54によつて回転自在に取付けられている。

不銹鋼の板で作つたクレピス58が、その側面60(その中の一つだけを図示してある)を締め板の延長部42、44の下に横方向になるよう、管46上に配置されている。〈省略〉インチ(6.3mm)直径の頭付きピン62(第2図に断面で示す)がクレピスの側面と管46の孔64を貫通しており且つ頭付きピン62のコツタ孔に入つたコツタピン(図示せず)によつて回転自在に取付けられている。

長さ3インチ(76.2mm)、直径〈省略〉インチ(6.3mm)の丸頭のねじ68がクレピス58のペース71の孔70を通りそこから座金72をその下の台29のほぞ孔78に入つているナツト74とロツクナツト76を通り、これによつてクレピス58をダガボード20に回転自在に取付けてある。ねじ68がクレピス58のペースを充分な遊びをおいて保持し、クレピス58を座金72に接触して回転可能にしている。

第1図と第3図を参照すれば、波乗り板10の表面23から4フイート(120cm)のところに積層木製ブーム16、18を設け、且つそれらの端部を弓形に連結してある。前記プームの円柱側の端部は1インチ(25.4mm)幅の載物テープのループ80によつて互に連結され且つ円柱12に連結されている。このテープループ80は帆のへり30の三日月形の孔82を通る円柱12を取り巻いている。前記テープループ80は縦い付け86によつて両端に真論リング84を保持している。このリング84は、木ねじ90によつてプーム16、18に固定した真論製のフツク具88と係合することによつてテープ80をプーム16、18に固定する。

第1図と第4図を参照すればプーム16、18はその帆耳の端部にそれぞれ出し素の孔92、94を備え、またねじ99によつてプーム16、18に固定された索止め96、98を傭えている。出し索100が一方のプーム18の索止め98からそのプーム18の出し索孔94を通り.帆耳104の補強した孔102を通り.第2プーム16の出し索孔92を通り、両方の出し索孔94、92を通りそこから別のプーム16の索止め96に通される。つぎに出し索をびんと張つて索止め96によつてしめつけて帆14をプーム16、18の間に保持する。

操作時に、使用者は円柱12をユニバーサルジョイント36にて取付けてある位置の背後において波乗り板10の上面28に立ち、一方のプーム16又はプーム18をにぎる。若し使用者が風下に進行していて方向転換したいとき、彼は帆14を前方に傾け、風の力を波乗り板10の先端部に作用させ、帆14のどちらの側面が風にさらされているかに応じて、波乗り板10を左か右に方向転換させる。これに反して若し使用者が上手回し間切りをするために風にまともに向つていきたいとき彼は帆14を後方に引いて風の力を波乗り板10の後方に作用させ、波乗り板10の後部を移動させて風にまともに向つて行けるようにする。彼が風にまともに向いているとき彼は単に帆14の前部に歩いて、反対側のプームをにぎつて帆を調整して風が帆14を補え波乗り板10がらしいコースに入るようにすることにつて上手回しを完了する。速度を調整するため帆を前方と後方に移動させる。

突風によつて波乗り板10がひつくりかえろうとするおそれのあるとき使用者は単に帆をはなして風にまかせて危険を説する。帆14はその円材にロープ106を備えており、これによつて使用者は容易に帆を帆走状態に引張りもどすことができる。

本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正変更を行うことができる。

特許請求の範囲

1 使用者を支持するようになつた本体装置と、前記本体装置と旋回可能に協働し且つ推進力として風を受け入れるようになつた風力推進装置とを包含し、前記推進装置の位置が前記使用者によつて制御でき、前記推進装置が使用者の不在のとき旋回防止力を失うことを特徴とする風力推進装置。

FIG.1

〈省略〉

FIG.2

〈省略〉

FIG.3

〈省略〉

FIG.4

〈省略〉

特許審判請求公告

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

特許公報

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例